VVVFインバータで制御する交流電動機にはがご形誘導電動機(IM)が使われてきましたが、より高効率、小型軽量の永久磁石同期電動機(PMSM)の適用も考えられるようになりました。以下に両者の比較をしてみました。
はじめの電動機のトルク発生原理は説明がやや込み入っております。飛ばしてお読みください。

  永久磁石同期電動機(PMSM)  かご形誘導電動機(IM)
 電動機  

永久磁石が発生する磁束φと固定子3相巻線に流れる負荷電流iaが直交し、電動機の接線方向の力Fが発生する。  トルクT(=Fr ;電動機の半径)が生じる。 


固定子に3相巻線、回転子の鉄心のスロットにはたくさんの銅の棒が挿入されており、両端を円環に接続されている。この形が二十日鼠やリスが乗って廻すかごに似ているので、かご形と称する。固定子巻線に3相電源を接続すると、i1が流れ、磁束φdφqが生じる。回転子が固定子の3相交流周波数より、わずかに遅く、もしくは速ければ、回転子の 銅の棒がφqを横切り電流i2が流れる。このi2φdが直交し、電動機の接線方向の力Fが発生する。すなわち、トルクT(=Fr ;電動機の半径)が生じる。 
1,磁束は永久磁石が発生するので、磁束を発生させる磁束電流 が要らない。磁極の相互作用によるトルクが若干上乗せされる
  →IMに対し、小型、軽量、高効率

2.レアメタルを使用した永久磁石を使っている。→高価
3、発熱する巻線が固定子側にあるので、外被冷却が容易にできる
→全閉モータが出来る、
1.固定子巻線に磁束を発生させる電流も流れるので、固定子電流は大きくなる。→PMSMより外形、重量がやや大きくなり、効率もPMSMに比べるとやや低い。
2.回転子に巻線を使用しておらず、簡単な構造→安価
3.回転子と固定子のギャップが小さいので、外被冷却で冷却可能   →全閉モータが出来る
 VVVF     インバータ 
(電動機4台の場合)
磁束と負荷電流が直交する位置をPS(位置検出センサー)で検出しインバータで電流を流す。この動作は直流電動機と同じなので、速い負荷応答制御が出来る。しかし、磁束と負荷電流が直交する位置は電動機により異なるので、インバータを電動機毎に設ける必要がある。
 
(電動機4台の場合)
電動機に特定の角度位置がないので、1台のインバータで複数の電動機を制御出来る。最新インバータには標準整備されていると思われるベクトル制御で、速い負荷応答制御が出来る。  しかし、電動機の負荷バランスが完全でない場合、低速域数%で制御が完全でないことが想定される。
1.0速度からトップ速度まで、速い速度制御応答が出来る。
2、電動機毎にインバータが必要→高価
 PS(位置検出センサー)は電車の場合、運転モードが特定出来るので、電気的に算出出来、機械的センサーは不要。
3.(理論的には)0速度で、直流になり、インバータの1アームに流れ続けるので、出力を絞らねばならない。
1.ベクトル制御適用、負荷バランスが取れていることにより、0速度からトップ速度まで、速い速度制御応答が出来る。
2.負荷バランス完全がでない場合、低速域数%で、速い速度制御応答が出来ないことがある。
3.複数の電動機を1台のインバータで制御出来る。→安価
 電車への適用 1.駆動系への対応;外形が小さいので、1,067㎜ゲージでも、TDカルダン、WN接手共適用可能。
2.純電気ブレーキ;0~100%速度で回生運転可能 
3、車輪の滑走、フラット防止;0~100%速度で可能
4、全閉モータの適用による静音化;可能
5.電車がノッチオフして、惰性で走る場合でも、永久磁石からの磁束が固定子コイルを横切り、鉄損が発生する。ノッチオフで運転するタイミングの多い小田急急行の運転パターンで、省電力効果をシミュレーションをした結果、IMに劣る。
6.価格;モジュール、ユニットタイプのインバータの採用により、価格低減を計るも、IM適用に比べ高価になることは否めない。
 1.駆動系への対応;電動機を高速化にすることにより、外形を小さく出来るので、1,067㎜ゲージでも、TDカルダン、WN接手共適用可能。
2.純電気ブレーキ;ベクトル制御、負荷バランスが取れていることにより、0~100%速度で回生運転可能。
3、車輪の滑走、フラット防止;ベクトル制御、負荷バランスが取れていることにより0~100%速度で可能

 1台のインバータで8台のIMを制御(1C8M)している電車も多く見受けられるが、車輪踏面にはテーパ(傾斜)がついており、機械的に負荷バランスが取れているようにも考えられるか?
4、全閉モータの適用による静音化;可能
5.価格;IMはPMSMに比べ、安価。それを多数のモータを1台のインバータで制御出来るので、PMSM適用に比べ圧倒的に安価

  
(2021-5-30)


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