3.VVVFインバータ

 3-1 VVVFインバータとは?
  
VVVFとはVariable Voltage Variable Frequencyの頭文字をとったもので、可変電圧可変周波数電源のことを言います。インバータとは直流から交流に変える変換器のことを言います。VVVF、可変電圧可変周波数電源には電源の交流から直接、電動機に与える可変3相交流に変換するサイクロコンバータのような方式もありますが、電車の場合、直流から交流に変換するインバータが専ら使われますので、鉄道関係ではVVVFインバータと称しているようです。
 インバータの基本原理は簡単です。
 


図3.1 インバータの基本原理

  6つのスイッチA、B、C、X、Y、Zが図3.1のごとく接続されており、そのスイッチの上端と下端を結んで、直流電源に接続されております。スイッチの中間が3相誘導電動機のU、V、W相につながっております。先ず、スイッチA、Zを閉じると、誘導電動機のU相に直流電圧Vdcが現れます。電動機が1/2回転するタイミング180°で、開きます。A、Zスイッチから、120°遅れて、B、Xスイッチを閉じます。同じく、180°で、開きます。次に、C、YスイッチをA、Zスイッチより240°遅れて、閉じます。これにより、3相誘導電動機のU,V,W相に相互に120°ずれた3相交流電圧がかかります。電動機は360°で1回転します。(2極電動機、すなわち、磁束が1つの場合)。このスイッチのON、OFFの頻度を上げて行けば、周波数が高くなり、電動機の回転が速くなります。しかし、機械的スイッチでは、頻繁な開閉には限度もありますし、すぐ、へたってしまいます。実際のインバータはパワー半導体のスイッチング素子により、行われます。最近ではほとんどIGBTというスイッチング素子が使われております。

 3-2 IGBTインバータ


図3.2 IGBTインバータ

 IGBTInsulated Gate Bipolar Transister)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタは、オーデオアンプに使われていたトランジスタのベースにFETをつないだ複合素子です。トランジスタ(バイポーラ トランジスタ)を2つつなぎ、容量を大きくしたパワートランジスタが、インバータ用のスイッチング素子として、実用化されましたが、耐圧、容量が拡大できませんでした。FET(電界効果トランジスタ)はトランジスタアンプの一段目、高入力インピーダンスが必要な検波に使うために開発されたものです。電圧ゲート信号で、スイッチング出来ますので、スイッチング速度が速くできましたが、大きな素子は作れませんでした。このFETをパワートランジスタのベースに繋ぐことにより、電圧信号で早くスイッチング出来、容量が大きくできるスイッチング素子として、開発、製品化されたものがIGBTです。
 図3.2にIGBTインバータの主回路を示します。IGBTは図3.1のスイッチと同じ動作で、周波数を変えますが、このIGBTにパラにダイオードが接続されております。これは、かご形誘導電動機には、電圧位相より、遅れた電流がながれますので、ダイオードはその通り道になります。また、回生運転の時も電圧と電流は逆になりますので、電流はダイオードに流れる比率が多くなります。

 3-3 PWMによる可変電圧

 インバータで交流電動機の回転数を変えるには周波数とともに電圧を変えねばなりません。(何故、電圧も変える必要があるのか?2‐4‐2,かご形誘導電動機の使い方可変電圧可変周波数(VVVF)装置による回転数制御を参照願います、)インバータの前にコンバータ(交流を直流に変える変換器)をつなぎ、直流に変換し、その大きさも変える方式もありましたが、直流を架線から受けて走る電車には使えません。インバータで電圧も変えることが出来るのがPWMです。図3.1のようにインバータは180°毎にプラスとマイナスの直流電圧を切り替えて、3相交流電圧を作るもので、その波形は方形波もしくは矩形波と言われるものです。PWM(Pulse Width Modulation)ーパルス幅変調はオリジナルには方形波の通電時間を変えて電圧を変えるものでしたが、方形波では電動機がスムーズに廻りません。



図3.3 三相交流

 図3.3のように、相互に120°ずれた正弦波3相交流で交流電動機を廻すことにより、すべての電動機角度で、等しい回転力(トルク)を出せますが、方形波では電動機でトルクのムラ(脈動)が生じ、駆動機械系に振動を引き起こすことがあります。このため、インバータの出力電圧、電流を正弦波にするため、最近のPWMは180°の方形波を中心では太く、周辺では次第に細いパルスの組み合わせとし、そのパルス幅を変えることにより、電圧を変えるとともに、常にその平均電圧が正弦波になるように制御します。

 

図3.4 IGBTインバータのPWM動作原理

図3.4により、IGBTインバータのPWMによる電圧の変え方を説明しましょう。 図(a)に示すIGBTインバータは図3,2と同じですが、IGBT A とIGBT Zで、3相誘導電動機、U相巻線に交流電圧を与える場合を示しています。電動機のスター結線の中性点を0電位としますと、IGBT Aをオン(導通状態)にした場合、電動機U巻線にはインバータの入力直流電圧Vdcの1/2の+Eが与えられます。方形波交流の場合、180°導通したままにします。IGBT Aをオフ(阻止状態)にしてから、IGBT Zをオンにしますと、インバータの入力直流電圧Vdcの1/2のーEがU巻線に現れます。
 PWMを行う場合、180°の間、IGBT A とIGBT Zを頻繁にオン、オフを繰り返します。IGBT A とIGBT Zの通電時間が等しい場合、図(b)のごとく、平均電圧は0になります。IGBT Aのオンの状態が多い場合の図(c)ごとく、平均電圧は正(+)になります。IGBT Zのオンの状態が多い場合の図(d)ごとく、平均電圧は負(ー)になります。このオン、オフの時間、すなわち、パルスの幅を変えることより、+、0、-の平均電圧を連続的に変えることが出来ます。図(e)のごとく、180°の間、中心のパルス幅を広くして、周辺部のパルス幅を狭くすれば、平均電圧は正弦波になります。この状態を保ち、各々のパルスの幅を変えれば、電圧の大きさ(振幅)を変えることが出来ます。
このパルスの頻度、すなわち、周波数を高くすれば、正弦波のかたちが良くなり、電動機はスムーズに廻り、インバータや電動機から発する音も小さくなります。初めに電車に用いられたGTOインバータはGTO素子の切れ味が悪かったので、PWMの周波数を高くすることが出来なかったために、異音が発生しました、IGBTはスイッチング性能が格段に良いので、ビルの空調設備などに使う静音形インバータはPWM周波数を15KHz程度にしているようですが、スイッチング頻度を上げると、インバータの損失が大きくなり、出力容量が大きくできませんので、電鉄用インバータは2kHz程度にしていると聞いております。

4. インバータの制御
  


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(2016-12-17)作成