電車の好きなはーさんはホームページ

       
で、内外の古い電車をたくさん見て頂いております。
電車は言うまでもなく、モータ(電動機)で動いております。 モータは電気のパワーを得て動いています。電気は発電所で作られ、モータのあるところに送られ、モータに電気のパワーを与えます。モータ以外に家やビルのあかりやエヤコン、冷蔵庫などいろいろなものに電気は使われています。 しかし、電気は目に見えないので、苦手な人も多いようです。しかし、これは世の中を明るくし、電車をはじめ、いろいろなものにパワーを与える極めて重要なものです。
 はーさんは長い間、モータの適用技術に携わっており、電気学会IEEJプロフェッショナルに認定されております。ここでは、身近でお好きな人も多い電車をベースに電気の 基本とモータを出来るだけ分かりやすく考えてみようと思います。

 

 

 家庭で使う電気は100ボルトですが、電車はたくさん電気を使うのでもっと高い電圧の電気を使っています。東京や大阪のJRや私鉄では架線から直流をパンタグラフで、電車に取り込みモータを廻して走ります。

 

 

 これははーさんの大好きな京浜急行の古い電車モハ230形です。大きなパンタグラフで架線の直流電気を取り入れ、車輪の軸とギヤーで繋がっている4個の直流モータを廻して走っています。

しかし、電力会社より、送られて来る電気は交流という違う種類の電気です。電鉄会社は交流を直流に変えねばなりません。交流を直流に変える装置は整流器と言います。架線の直流の電圧は路面電車では750ボルト、それ以外では1500 ボルトです。電力会社から送られて来る交流の電圧は多くは6万6千ボルトという高いものです。架線の直流の電圧に併せて、整流器に与えなければなりませんので、交流電圧をトランス(変圧器)で落とします。このため、電鉄会社では、トランスと整流器を置いた電鉄変電所を設けねばなりません。発電所は電車の走っているところから遠いところにありますので、更に高い電圧として、電流を少なくして、大量の電気を 遠くに送るようになっています。このため、電力会社には、この高い電圧を6万6千ボルトに落とすためのトランスを持った変電所があります。又、発電した電圧を遠くに送るための高い電圧に上げる変電所もあります。 このように使われている電気のほとんどは交流です。家庭で使う電気は6万6千ボルトから更に6千6百ボルトに落として、電柱の上の電線で、各家庭の近くまで、来て、電柱の上にある柱上トランスで100Vにして、各家庭に電気を 届けます。家に引き込む電線は2本ですが、上の図では電線が3本になっています。これは3相交流を表しております。家庭用は単相交流ですが、電柱の上の6千6百ボルトは3相交流です。最も多く使われている交流モータは インバータを使わず、直接、この3相交流につないで廻します。

 電車は回転速度を簡単に変えることが出来る直流モータを使っていましたので、架線にも直流を与えます。しかし、電圧を高く出来ないので、電流が大きくなり、変電所から遠くまで送れません。電鉄変電所をたくさん設けねばなりません。このため、地方の線を電化する時、交流を架線に与えることも多くありました。(交流電化) 交流電化では トランスと整流器を車両に積み、直流モータを廻していました。 昭和39年の東海道新幹線の開通は架線電圧2万5千ボルトの交流電化で無ければ実現しませんでした。それは 新幹線のような高速で長編成の列車を動かすには大容量のモーターが必要で それを廻す電力を直流では供給することが出来無かったからです。

 最近、直流モータのかわりにインバータを使って廻す交流モータがほとんどの電車や電気機関車で使われるようになっています。架線にかかるのが直流でも交流でも交流モータが使われるようになりました。インバータにより、交流モータが直流モータと同じ動きをするからです。

でも、何故、電力会社から送られてきた交流に直接つないで廻してはいけないのでしょうか?事実、大半の交流モータは電力会社から受けた3相交流に接続しただけで廻しております。電車は速度を制御しなければならないからでは?これが、直ぐ頭に浮かびますが、これは 必ずしも正しくありません。電車は発車して速度を上げて行きますが、ある速度になるとノッチオフして、惰性で走ります。スイスには3相交流に直接つないで走る登山電車があります。

 

 

これはスイスのマッターホルンの展望台に行く、ゴルナグラット登山鉄道(GGB)です。架線が2本並んでおり、パンタグラフも2台、横に並んでおります。

  3相ですから電気の流れる線は3本なければなりません。1本は線路を使えますが、2本の架線が必要になります。規模の小さい登山鉄道では余り問題にならないでしょうが、普通の鉄道では、分岐したり、クロスすることがありますので、2本の架線が交わらないようにするのは不可能に近いでしょう。では、単相交流にすれば良いのでは?と思いますが、単相交流では交流モータは廻らないのです。洗濯機、扇風機などの交流モータは家庭用単相交流で廻っていますが、これは、一寸した仕掛けがあり、単相交流を見せかけの3相にして、廻しており、小さなモータにしか、使えません。日本の交流電化は全て架線は1本ですから、単相交流です。交流モータを廻すのにはインバータで3相交流にせねばなりません。又、回転数を変えるのに電圧と周波数を変える必要があります。インバータはVVVFととも言われております。これは電圧と周波数を変える装置の意味です。何故、交流モータの回転数を変えるのに電圧と周波数を変えるのでしょうか?又、ベクトル制御なんてい うものでインバータを制御している電車もあります。最近、永久磁石同期モータ(PMSM)を使った電車も出て来ました。交流モータには幾つかの種類があり、いままで、電車に使われていたのはかご形誘導モータ(SCIM)と言われるもので、あらゆる用途に一番たくさん使われているものです。同期モータはこれとは違うタイプで、インバータの動きも違います。

 エジソンが始め作った電力会社は直流で発電し、配電していましたが、規模が大きくなるに従い、行き詰まり、3相交流の登場になりました。直流はプラスとマイナスの2本の線の間に電圧がかかり、負荷抵抗で決まる電流が回路に流れるという極めて分かりやすいものです。しかし、交流ではそうは行きません。 増して、何故、3相交流?? やはり、電気の実像を知るには、直流、交流の違いなど電気の基礎を見る必要があります。
 次に、モータ(電動機)を考えてみましょう。モータは電車の他に、ポンプ、ブロワー、コンプレッサー、クレーン、製鉄、製紙、その他の産業の機械に広く使われております。電気のパワーを機械のパワーに変えて、あらゆるものを廻します。一定の速度で廻すもの、頻繁な始動、停止の繰り返し、精密に回転数を制御しなければならないもの、と多様です。ここでは、電車も含めて、広い範囲の 用途に対してのモータの活躍を考えてみましょう。モータにも種類があります。同じモータでも電源に接続するだけで廻すもの、回転数の制御をするものがあります。適切な種類のモータを選び、それを始動したり、回転数を制御する装置を考える必要があります。ここでは、それを簡単に説明致しましょう。そして、 やはり鉄道ファンですので、電車のモータと制御についても考えましょう。
 出来るだけ、数式や詳細な回路図などは省き、基本的な原理を考えるようにしました。

    ・電気は馴染めなく、良く分からない!しかし、簡単にあらましを知りたい!という方々

    ・電気を知りたい中学生、高校生!

    ・少し技術的にも知りたいと思う鉄道ファン

にご覧頂きたいと思います。

 より詳しく知りたい場合は専門書をご覧願います。


 とりあえず、以下の項目でお話を進めて行きたいと思います。それぞれの説明ページは項目にリンク しておりますのでクリックして、ご覧頂きたいと思います。今後、1ヵ月に1項目程度を目安に作って行くつもりです。読んだ方のご意見を是非賜わりたいと思います。以下にポストをクリックされ、メールを頂きたいと思います。

 項目は作ってゆく過程でご意見も考慮して、変更、追加したいと考えております。ウェッブサイトの特徴を生かし、変幻自在にしたいと思います。気楽にお付き合い願います。

 

謝辞

 本サイトは畏友KKさん、TNさんの絶大なご協力により、作成しております。謝意を表したいと思います。




  1.電気と電動機の基本
   1−1 直流と交流

     (1)直流 
        電圧(V)、電流(I)、抵抗(R)そして電力(P)

        直流発電機と直流電動機
     (2)交流 

        交流発電機と交流電動機の基本原理
        電圧(v)、電流(i)、抵抗(R)、インダクタンス(L)、キャパシタンス(C)
         交流では4種類の電力がある。
        有効電力、遅れ無効電力、進み無効電力、皮相電力、力率
      (3)何故、交流が優位になったのか?エジソンとテスラの大論争
         トランスにより電圧を変えることが出来る。


   1−2 3相交流
        
    1−3 電力の送電、配電(電力系統)と動力電源系統

      
  2.電動機とその使い方
   2−1 電動機(モータ)はどのように廻り、力(回転力)を出すのか?
     
   →電動機の基本原理と性質

                出力(動力)とトルク(回転力)
   2−2 電動機と負荷機械

          駆動軸系(電動機と負荷機械の結合)

          ギァー(減速機)の効果

         慣性モーメント、加減速時間、加減速トルク、動力
   2−3 電動機の顔ぶれ

    2−3−1 電動機の種類

    2−3−2 直流電動機
     2−3−3 同期電動機       

         2−3−4 誘導電動機

            かご形誘導電動機

             巻線形誘導電動機

      2−4 電動機の使い方

      2−4−1 直流電動機の使い方

     抵抗始動(抵抗制御)

     可変電圧制御ーレオナード

         ワードレオナード

         静止レオナード(水銀整流器)

         サイリスタレオナード

     可変電圧制御ーチョッパー

          
    2−4−2 かご形誘導電動機の使い方
     3相交流動力電源に直接接続して始動、運転をする
     可変電圧可変周波数(VVVF)電源による回転数制御

 

    2−4−3 巻線形誘導電動機の使い方

     2次抵抗制御

     2次電圧制御
         
    2−4−4 同期電動機の使い方
     3相交流電源に直接接続して始動、運転をする
     可変電圧可変周波数(VVVF)電源による回転数制御

    2−5 主な電動機の速度制御装置の比較

 
  3.VVVFインバータ
     3−1 VVVFインバータとは?
     3−2 IGBTインバータ
     3−3 PWMによる可変電圧  

  4. インバータの制御

      4−1 V/f一定オープンループ
      4−2 ベクトル制御

          

  5.電車を動かす電動機(抵抗制御直流電動機からVVVF駆動交流電動機へ)
    5−1 電車駆動電動機と制御の変遷

         直流電車の制御と電動機の変遷
         交流電車の制御と電動機の変遷
    5−2 電車への交流電動機の適用効果
       (1)省保守
       (2)消費電力の削減
       (3)粘着力の改善ー空転、滑走の防止
       (4)交流電動機の高速化、小形化により出力アップ
           新幹線100系とN700系の比較
           欧州高速列車の動力分散化
       (5)交流電動機の高速化、小形化による駆動装置の簡素化
           東武鉄道8000系と60000系の比較  

(2016-12-27) 3.VVVF追加改訂
(2015-6-3)タイトル追加改訂
(2014-12-28)改訂

(2012-1-11)


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はーさんの電車と電気・モータのお話