京浜急行電鉄は1958年(昭和33年)にその前身「大師電気鉄道」が1898年(明治31年)2月25日に創立されてから、満60年を迎えました。その年の6月8日(日)には「京浜急行創立60周年記念見学試乗会」が開催され、参加致しました。 この時の様子、 試運転列車と当日、会った電車の姿をすこしご覧頂きたいと思います。

 

デハ851(先頭)の60周年記念試運転列車  浦賀〜馬堀海岸  1958-6-8

 

 品川駅9時集合でした。試運転列車は (品川方) 851+801+758+706+789+739 (浦賀方)

の6両編成でした。

 

出発を待つ60周年記念試運転列車(後尾 デハ851)  品川  1958-6-8

 

 

 800形は都営地下鉄1号線(現浅草線)線乗り入れ用のプロトタイプで、801+851を東急車両で、802+852を川崎車両で作られました。2扉クロスシートの700形を3扉ロングシートにした車で、500系以来の前面2枚窓の非貫通でした。

 試運転電車の700形もこの年に作られた新車でした。

 

デハ851運転席    1958-6-8

 

 電気品は東洋電機製でカルダン駆動でした。運転室の細いマスコンと戸閉スイッチは京浜急行を主張していました。この当時はまだ運転士がドアーの開閉を行っておりました。

 

デハ851のTS形台車    1958-6-8

 

 801+851は東急車両のTS台車を履いておりました。この当時は空気バネは一般的でなかったようで、コイルバネでした。

 

創立60周年記念品  1958-6-8

 

 700形2連の文鎮の創立60周年記念品を頂きました。

 

試乗会車内風景  1958-6-8

 

試運転列車は420名あまりの鉄道ファンを乗せ、9時40分品川を出発し、10時39分に浦賀のひとつ手前の馬堀海岸に到着しました。ここで、電車を先ず、撮影する組とバスで観音崎に向かう組に分かれました。もちろん、電車、撮影組でした。

 試運転列車は一旦、浦賀に向かい、撮影の為、浦賀〜堀之内間を2往復して呉れました。

 

試運転列車(先頭デハ739)浦賀に向け回送  浦賀〜馬堀海岸  1958-6-8

 

 鉄道ファンを降ろして、浦賀に出発する試運転列車です。

 

試運転列車(先頭デハ739)堀之内に向け回送  浦賀〜馬堀海岸  1958-6-8

 

 浦賀から折り返し、堀之内に向かう試運転列車です。

撮影を先行していた組も11時40分、バスで観音崎に向かいました。

 

 

京急観光バスと観音崎灯台  1958-6-8

 

 観音崎で用意して頂いた休憩所で昼食をとるなどした後、バスで浦賀に戻り、電車の撮影後、15時46分浦賀発の同じ試運転列車で品川に向かいました。

 以下にこの時、会った電車をお目にかけましょう。

 

700形品川行特急(先頭デハ784) 浦賀  1958-6-8

 

 700形は全金属製2扉クロスシートの当時の花形でした。

 

700形品川行特急(先頭デハ702) 馬堀海岸〜浦賀  1958-6-8

 

 東急車両と川崎車両で製作され、東急車両製は東洋電機のカルダン駆動、川崎車両製は三菱電機、WN駆動でした。

 

デハ753 TS形台車   1958-6-8

 

デハ784 OK形台車   1958-6-8

 

 台車も東急製はTS台車、川車製はOK台車でした。OK台車はふわふわとした乗り心地で人気がありました。

 

600形浦賀行特急(先頭デハ609) 馬堀海岸〜浦賀  1958-6-8

 

 500系2扉クロスシート車から採用された当時流行の国鉄湘南電車の影響を受けたと言われた2枚窓非貫通のスタイルは3扉ロングシート車600形にも受け継がれておりました。このスタイルは700 形、800形にも踏襲されましたが、ダークバーミリオンに白帯を締めた姿は湘南電車とは異なった京浜急行独自の好ましいスタイルであったと思います。

 

600形浦賀行普通(先頭デハ608) 馬堀海岸〜浦賀  1958-6-8

 

600形品川行普通(先頭デハ632) 馬堀海岸〜浦賀  1958-6-8

 

 600形は当時の主力であったようで、特急にも普通にも使われていました。

 

500形品川行特急(後尾デハ507) 浦賀  1958-6-8

 

 一方、クロスシート車500形は少なかったようで、浦賀でやっとお目にかかれました。

 

400形品川行普通(先頭デハ404) 浦賀〜馬堀海岸   1958-6-8

 

 400形は戦後の規格車ですが、名車230形の面影がすこしは残っているようでした。

 

300形浦賀行特急(後尾デハ304) 浦賀〜馬堀海岸   1958-6-8

 

 300形は戦中に作られた電車で、230形をすこし、大きくしたような車でした。

名車230形はこの当時も活躍しておりました。

                  

 

 230形は別ページにありますので、上のアイコンをクリックしてご覧頂きたく思います。

800形は1000形になり、貫通扉付になりました。地下鉄乗り入れなどの主力になり、大活躍しましたが、今は完全に姿を消してしまいました。このページの風景も、つい今しがたのように思われますが、すべては思い出の京浜急行になってしまいました。

 なお、ここに記載している形式はこの当時のものですので、ご承知願います。

 当日は撮影の為、試運転電車を浦賀近辺で往復運転もされ、50年余り前のことではありますが、その努力に敬意と謝意を表したいと思います。

 この「京浜急行創立60周年記念見学試乗会」に参加された方もおられると思います。当日も思い出がありましたら、是非、下のポストをクリックし、メールでご連絡頂きたいと思います。


1960年(昭和35年)8月に撮影しました1000形(800形)のカラー画像を追加致します


1000形4連 特急逗子行      屏風ヶ浦    1960年8月


1000形4連 特急品川行      屏風ヶ浦    1960年8月

 400形でレッドに白帯の1000形と同じ、塗色の400形も撮りました。試験塗装車なのかも知れません。


400形2連、普通久里浜行         屏風ヶ浦       1960年8月


 謝意

  このページを作成するにあたり、友人のKKさん、TMさん、TSさんに多大なご協力を頂きました。

  深謝致します。

  鉄道ピクトリアル通巻85号鷹司平通氏「京浜急行新車の試乗会」をmo-yan様から紹介頂きました。

  おかげさまで試運転列車の編成、試乗会の模様が良く分かりましたので、大幅に書き直しました。

  有難うございました。 

 

参考文献

  鉄道ピクトリアル1958年7月号 通巻84号、私鉄車両めぐり(32) 京浜急行電鉄

  鉄道ピクトリアル1958年8月号 通巻85号、鷹司平通「京浜急行新車の試乗会」

  RAIL FAN(鉄道友の会会誌)53 京浜急行60年特集

(2011-9-10)
(2015-7-12)追加改訂

 


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