1959年(昭和34年)の夏休み、大学の鉄道研究部の仲間 と、関西の鉄道歴訪をしました。関西の電車は東京の鉄道ファンにとっては、憧れの的で、毎年、関西に通っていたような覚えがありました。 このときは

    東京から(名、近鉄、鶴橋、岐阜、高山線、太多線、中央、小海、軽、熊)経由東京都区内ゆき

という壮大?な連続切符を学割で求め、7月13日に出発、19日に帰ったようです。体力はあるがお金がない学生の旅行で、夜行も使い、短期間でたくさんの鉄道を見ようとしたのでしょう。近鉄では、大阪線の大和八木付近、奈良線、橿原線、奈良電鉄のジャンクションの大和西大寺付近で、撮りました。

 奈良線では生駒トンネルの車両限界のため、小型電車が走っていました。

 

モ800形 モ810(先頭)大阪上本町行特急 西大寺ー油坂 1959−7-16

 

 この時期の奈良線のスターはモ800形による大阪上本町ー奈良間の特急でした。モ800形はWN駆動軽量全金属製で奈良線唯一の高性能車でした。マルーンにステンレスの帯をしめた前面2枚窓で、鹿が跳ねているトレーンマークをつけていました。

 

モ600形 モ612(先頭)奈良行急行 西大寺ー油坂 1959−7-16

 

モ647形 モ650(先頭)奈良行急行 西大寺ー油坂 1959−7-16

 

 大阪ー奈良間急行には当時、主力のモ600系で運転されていました。モ600形は戦前の1935年(昭和10年)に初期のものは作られ、戦後の1948年(昭和23年)に増備された昭和2桁代の典型的なスタイルでした。これに続き1950年(昭和25年)に作られたモ647形は張上げ屋根になっており、ややスマートになりました。

 

モ460形 奈良行普通 西大寺ー油坂 1959−7-16

 

  モ460形はモ200形になった開業時代の車両に続く木造車を鋼体化したものでした。鋼体化更新は車体を新製することが多いようですが、この車両は安価にする為、台枠、床下ぎ装をそのまま用い、窓枠、扉もそのまま使用していましたので、木造車のおもかげを残していました。

 

奈良電鉄デハボ1350形、デハボ1354(先頭) 近鉄奈良発京都行急行 西大寺ー油坂 1959−7-16

 

 現在、近鉄京都線になっている京都ー大和西大寺間は奈良電鉄、通称「奈良電」という独立した会社線でした。大和西大寺から近鉄奈良まで近鉄奈良線に乗り入れていました。デハボ1200形というWN駆動の高性能車を持っていましたが、モ1350形は同じスタイルで旧型車の機器を流用したつり掛け車でした。

 

奈良電鉄デハボ1000形、デハボ1016 近鉄奈良発京阪三条行急行 油坂ー西大寺 1959−7-16

 

 奈良電は京阪線に乗り入れ、京阪三条まで行っていました。デハボ1000形は1928年(昭和3年)の開業時に作られた電車で、屋根の深い昭和初期の電車に良くあるスタイルでした。

 奈良電は近鉄と京阪の合弁会社で車両も独自のスタイルでしたが、1963年(昭和38年)に近鉄に合併され、京都線となりました。

 

モ200形 橿原線普通 西大寺ー尼ヶ辻 1959−7-16

 

 近鉄の前身、大軌(大阪電気軌道)、開業時の木造ボギー車、モ200形が未だ橿原線に走っていました。初期の車は1914年(大正3年)製で、訪れた時は50歳近く、廃車も間近いようでありました。しかし、1953年(昭和28年)の中学の修学旅行の時、八木からの橿原線急行はモ200で、かなりの速度で走ったのに驚いた覚えがありました。

 

モ200形 モ212 西大寺車庫 1959−7-16

 

 西大寺車庫にお邪魔してすこし撮らせてもらいました。前面たまご形5枚窓の電車は関東のファンとしては京浜急行120形、140形がおなじみでしたが、モ200はこれらよりやや大ぶりな感じでした。

モ450形 モ451 西大寺車庫 1959−7-16            モ600形 モ601  西大寺車庫 1959−7-16

 

 ボディーはモ600と同じですが、大阪線2000形の機器を流用したモ451形、初期の非貫通のモ600もおりました。

 

 当時、奈良線は小型車での運行でしたので、大阪線に比べて迫力がありませんでした。しかし、新生駒トンネルが開通し、奈良電が近鉄に合併され、全く、変わってしまいました。

 約50年前の様子をすこし、ご覧頂けたと思います。

 

謝辞

 作成にあたり、むーさんから貴重なアドバイスを頂きました。謝意を表します。

 

参考文献

  鉄道ピクトリアル1960年2月号通巻103号 私鉄車両めぐり(38)近畿日本鉄道(2)

 

(2008-1-25)
(2016-10-31)タイトル更新
(2020-4-28)リンク追加




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