九州の市内電車は私営軌道が多かったのですが、熊本の市内電車は熊本市交通局が運営する文字どおりの市電でした。1924年(大正13年)の開通以来の 市営です。

 で、4月2 9日には熊本に来ました。

総延長25.2km、6系統の運行をしており、現在の倍以上の規模がありました。ゲージは1435mmです。

 

市電路線図 宮さん撮影

 

乗換券(部分拡大)

 

乗換券と乗車券

 

 1号線から7号線までありましたが、5号線は運行されていませんでした。市電路線図と乗換券(部分拡大)を辿り当時の運行系統を見てみましょう。

 

       1号線   田崎橋〜辛島町〜水道町〜子飼橋 
      2号線   熊本駅前〜辛島町〜水道町〜交通局前〜健軍
      3号線  上熊本駅前〜新町〜辛島町〜水道町〜交通局前〜水前寺体育館
      4号線  上熊本駅前〜広町〜水道町〜交通局前〜水前寺体育館 
      5号線   (運転中止) 
       6号線   南熊本駅前〜辛島町

      7号線  辛島町〜慶徳校前〜川尻町

 

 5号線はかっては 南熊本駅前〜辛島町〜水道町〜交通局前で運転されていたようです。

     

 1〜3号線が幹線のようで、ボギー車で運転され、4,6,7号線は専ら単車で運転されていました。熊本市電でも、戦前は全て単車で運行されており、その淘汰の為、戦後まもなくの1948年(昭和23年)からボギー車を毎年、新製していましたが、未だ、木造単車も多く残っておりました。

 現在は2号線と3号線のみが運行されており、2号線は田崎橋ー熊本駅間が延長され、3号線も上熊本ー健軍間になっています。

 

120形123  市役所前    1964-4-29

 

1948年(昭和23年)に作られた熊本市電初めての半鋼製大型ボギー車120形です。車長12m、中間扉のある地方都市の市内電車としては大きなもので、従来の単車の2倍の定員があ ったそうです。130形も同時に作られ、全く同じ電車ですが、メーカーが違う為別型式になったようです。

 

130形134  市役所前 宮さん撮影   1964-4-29                          150形153  市役所前    1964-4-29

 

170形172  市役所前    1964-4-29                            180形184  市役所前    1964-4-29

 

188形188  水前寺公園    1964-4-29

 

 120、130形に続き、毎年、ボギー車を増備し、形式は製作の度に変わりましたが、中央窓のやや大きい3枚窓のスタイルはかわらなかたようです。188形はノーシル・ノーヘッダで、窓も大きくなり、軽快なスタイルになっています。これらの車両は現在では殆どが廃車になっています。

 

200形203  市役所前    1964-4-29

 

200形208  水前寺公園    1964-4-29

 

350形353  水前寺公園    1964-4-29

 

 1958年(昭和33年)に出現した200形は全金属製ボディのようで、軽快なスタイルになりました。1960年(昭和35年)に作られた350形もほぼ同じ電車ですが、製造年にあわせて、350形を名乗ったとのことです。200、350形はパンタグラフを載せていました。そういえば、架線は路面電車としては珍しく、カテナリーでした。200形は1200形、350形は1350形として、現在も活躍しています。

 

380形382  市役所前   1964-4-29

 

380形388  市役所前 宮さん撮影  1964-4-29

 

 1963年(昭和38年)に大阪市電の名車901形、10両を譲受し、380形として、活躍していました。大阪市電901形は前面傾斜の付いた2枚窓、側面の膨らんだ流線型で、1935年(昭和15年)から作られた大阪市電のイメージに浮かぶ電車でした。NHKの朝ドラ「いもたこなんきん」にCGで出てきた有名電車です。この後、2回に渡って、譲渡され、熊本で、大活躍したようです。1972年(昭和47年)で廃車になったようで、 輸送力増強の短期リリーフであったようです。

 

10形15  南熊本駅前   1964-4-29

 

10形30  南熊本駅前付近   1964-4-29

 

 10形は1924年(大正13年)の開業時に作られた木造単車(2軸、4輪車)です。10形にはエアーブレーキが設けられていたので、このような木造単車が、この当時まで、生きながらえることが出来たのかもしれません。6 号線(南熊本ー辛島町間)は専ら、この電車で運転されていました。

 

長六橋上を走る10形23       河原町ー迎町  宮さん撮影   1964-4-29

 

 川尻線を走る10形です。7系統も専らこの電車であったようです。川尻線(慶徳校前ー川尻町)は1965年(昭和40年)に廃止になりました。

 

辛島町三角分岐    1964-4-29

 

 熊本の中心、辛島町には珍しい三角分岐がありました。

右に行けば辛島町電停、中央に延びる線は西辛島町電停、新町経由上熊本方面及び慶徳校前・熊本駅前・川尻町方面、中央から左下に行く線と下部の左に行く線が南熊本駅前}行(6号線)になり合流してから別に辛島町電停が有りました。
151の後が産交バスターミナル 後の山が金峰山です 

 151は3号線、上熊本発市役所前から水前寺体育館前に行きます。15は系統番号がよく読めませんが、辛島町から川尻町に行く7号線に運用されている電車でしょう。

 

60形69  藤崎宮前? 宮さん撮影  1964-4-29

 

 60形69は1938年(昭和13年)生まれの木造単車です。昭和二桁の時代に未だ、木造単車が作られたとは驚きです。4号線、上熊本発藤崎宮前経由(水前寺)体育館前に向かいます。かっては、熊本電鉄の始発駅、藤崎宮前まで、市電が行っていたのですね。

 1970年(昭和45年)に上熊本ー藤崎宮前、南熊本ー辛島町、1972年(1947年)には水道橋ー子飼橋が廃止になって終いました。

 日本で最初のインバータ電車、低床連接電車LRVを採用し、話題になっている熊本市電も40年前は全く、違った表情を持っておりました。

 

 尚、このページ作成にあたり、友人のNさんの多大なるご協力を頂きました。謝意を表したいと思います。

 

  参考文献

  鉄道ピクトリアル1962年8月号臨時増刊通巻135号 私鉄車両めぐり<第3分冊>熊本市電 

 

(2007-4-10)
(2016-10-31)タイトル、一部画像拡大更新


 


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