東海道新幹線が東京オリンピックを控えた1964年(昭和39年)10月1日に開業しましたが、この約3ヵ月前に初めての試運転列車が東京を走りました。完工した線路に初めて試運転列車が走るのを入線というのだそうです。当時、勤務していた 山手線大崎駅近くの電機工場の横に新幹線の高架が建設され、早く、新幹線のスマートな列車が走らないかと心待ちにしていました。7月15日 (水)に品川の東京車両基地から東京駅に入線をして、入線式を行いました。そして、21日(火)に東京ー三島間に試運転列車が初めて走りました。

 勤務していた工場の北西に貨物線(品鶴線)が走っており、それに沿って、新幹線の高架が建設されました。丁度、お昼休みの頃、試運転列車が来るとのことで、5階建の工場の非常階段からたくさんの従業員が、今 や遅しと待っていました。その露払いでしょうか?品鶴線の鶴見方向から蒸気機関車8620形が客車一両のみを従え、現れました。これは鶴見操作場から品川に行く配給列車( 保守部品などの授受を行う列車)で、牽いているのは職用車ではないかとのことです。現金輸送車ではないか?という説もありますまた、「この客車はMマニ32では?当時は米軍専用貨物車がまだ残っていて窓ガラスが白であったことを覚えています。米軍専用瑞穂埠頭と品川の小運転。ドアを開放しているようなので、品川への帰り回送車で?」はとのご意見を「むーさんの掲示板」に頂きました。 8620形は大正3年から初めて本格的に量産された国産旅客列車用蒸気機関車で、日本の鉄道が独り立ちしたエポック・メーキングな機関車と言えますが、世界に先駆けて実現した新幹線の 試運転列車の先導として現れたのは印象に残るものでした。この機関車は横浜機関区の所属で、これから、2年もしないうちにそのほとんどが廃車になってしまったようです。

 工場の北東側には大崎から国鉄大井工場に向う線が走っており、それと新幹線はオーバークロスしております。右の品川寄りから新幹線試運転列車がゆっくり走ってきました。 30km/hぐらいの速度でしょうか?

 試運転列車は6両編成でした。

 工場の横をゆっくり走ります。横顔は飛行機のようでした。

 新横浜に向って、去って行きます。

 東急大井町線の高架をオーバークロスをするため、新幹線の高架が盛り上がっているところに向って登って行きました。報道のヘリコプターが何機も舞っていました。

 7月25日には全線試運転が行われ、10月1日の開業に向って、着々と準備が進められて行きました。

 

当日は梅雨の真最中で天候も良くなかったようです。また、フィルムの劣化もあり、あまり良い画像ではありませんが、新幹線の揺籃期の一コマをご覧頂きたいと思います。

 


 新幹線開業初日10月1日(木)の一番列車東京駅6時00分発超特急「ひかり1号」に乗ること出来ました。

開業当初の超特急「ひかり」は東京ー大阪間、4時間運転でした。3時間運転ーA特急料金、4時間運転ーB特急料金、

5時間運転ーC特急料金と定められていましたので「ひかり」はB特急でした。

 

 

ホームでは盛大な開業セレモニーが行われていました。人がホームにあふれており、窓から眺めるしか、ありませんでした。

 

 

「東海道新幹線開通」記念弁当を求め、先ずは朝食です。200km/hという高速運転には、乗客もやや不安があったのか、一寸、ガタンという音がすると、皆さん、腰を浮かせたのを覚えています。10時00分に新大阪にアッという間に到着しました。

 

 

 

 帰りは近鉄特急に乗ったのでしょうか?名古屋20時13分発特急「こだま124号」に新横浜迄乗りました。新横浜23時06分着でした。「こだま」はC特急でした。

 

 新幹線には、以降、大変お世話になりました。名古屋、大阪はもとより、岡山、広島あたりまで、日帰り出張が出来るようになりました。多い時は毎週のように利用しました。しかし、朝の往路はともかく、帰りは夕方7時以降の列車になって仕舞います。冷たい駅弁を缶ビールで流し込む夕食は誠にみじめでした。このため、私にとっては、新幹線と駅弁は趣味の対象でなくなってしまいました。

 

畏友むーさんのホームページで新幹線開業と前後の様子をご覧頂きたいと思います。

 

 

参考文献

  鉄道ピクトリアル1964年9月号、通巻162号 7月のメモ帳  

謝辞

  作成にあたり、MTさん、MOさん、TSさん、TMさんにご協力頂きました。謝辞を表したいと思います。

  けんいち様より、8620が牽いてきた客車に付、ご意見を「むーさん」の掲示板」に頂きました。

    有難うございます。ご意見を追加させて頂きました。

(2009-4-25)

(2012-4-30)改訂

(2012-5-28)改訂
(2016-11-5)タイトル更新


(トップページ)(別館)

          (本館)