東武鉄道では、昭和30年代まで、蒸気機関車が貨物列車を牽き、活躍しておりました。多くは2−Bテンダー機で、英国スタイルの古典的なスタイルの機関車でした。これらの機関車をファンは「ピーコック」と言っていました。東北本線や高崎線の始祖の日本鉄道 には英国のBeyer Peacock社から購入した機関車が多く、他の英国の会社で製作したものも同じスタイルでした。日本鉄道と関係が深かった東武鉄道も同し系統の機関車を作り、日本鉄道が国有化された後も私鉄として残った東武鉄道がこの伝統を引き継いだようです。

 明治の面影のある古典蒸気機関車はどうも苦手でしたが、1965年(昭和40年)10月3日の日曜日に友人に誘われて、佐野線にのみ残っていた蒸気機関車牽引の貨物列車を撮りに出かけました。

 

 

 先ず、館林検車区を訪れました。30号機に火が入り出庫を待っておりました。

形式B3、29〜34は1914年(大正3年)に英国、マンチェスターのピーコック社で作られた自社発注車でした。29、33号機は当時、既に廃車になっておりました。

 

 

 佐野線の渡瀬〜田島間の渡良瀬川橋梁で、B3牽引の貨物列車を待ちました。

葛生方面から上り貨物列車がやってきました。34号機の牽引で、たくさんの貨車を牽いておりました。

 

 

 英国形古典機関車の走る姿をゆっくり眺めました。確かに繊細で優雅な感じがあり、ピーコック(孔雀)というのは、言い得ているようにも思えました。

 

 

 去りゆく姿です。第1動輪にかぶさっているスプラッシャー(泥除け)も英国機の雰囲気を出しております。次位の車掌車は木造でしょうか?機関車に似会っておりました。

 

 

 電気機関車の牽く貨物列車が館林方向からやってきました。牽引機はED5060形でしょうか?

 

 

 やはり、たくさんの貨車を牽いております。国鉄のワムの間に小型の有蓋貨車があります。これは東武のものでしょうか?最後に木造らしき車掌車が見えます。

 

 

 電気機関車重連の上り貨物列車が渡ってきました。ED5000形+ED5060形と思われます。

 

 

 蒸気機関車がワム2両、有蓋車掌車を牽いた下り貨物列車が橋梁を渡ろうとしています。

 

 

 30号機のようです。逆光でシルエットが浮かびます。

 

 

 今度はたくさんの貨車を牽いた下り貨物列車が橋にさしかかっております。重いので、煙を吐いております。

 

 

シルエットになり、渡良瀬川本流のトラス橋に向かって行きました。 これもB3形のようですが、良く読みとれませんが、31号機かもしれません。或いは、B4形の39号機か、40号機かも知れません。これは、元国鉄5650形を譲り受けたもので、1898年(明治31年)、Sharp Stewart製でPeacock製5500形と同設計とのことです。B4形は東上線で走っていたようですが、この時期、館林に来ていたようです。

   

            

 

 これは、宮代町の公園に静態保存されているB4形40号機ですが、B3形と全く同じスタイルです。

 

 

 渡瀬駅の近くと思われますが、34号機が下り貨物列車を牽いて来ました。

 

 

 

 渡良瀬川橋梁に登る築堤に向かい力行しています。

 

 

 佐野線の旅客輸送は電車です。昼間は1時間1本、2両編成でのんびり走っておりました。

佐野線は、末端の葛生近辺の貨物専用線の一部が非電化であったため、蒸気機関車が遅くまで、残りましたが、これも、翌年、1966年(昭和41年)6月に最後を迎えました。

 東海道新幹線も走り始めた時代に明治のかおりを持った英国製蒸気機関車が未だ活躍していたのは面白いことと思います。古典機関車にはあまり興味がなかったので、なんとなく、お付き合いで撮りに行きましたが、その写真 も長い間、お蔵入りでした。

  改めて、見てみると、ご覧頂く価値が少しはあるのではないかと思い、載せることにしました。

 


 佐野線の蒸気機関車牽引の貨物列車を撮影後、両毛線経由で、帰ったようで、両毛線列車の姿が少しありました。

 

 

 C58145牽引の貨物列車です。撮影場所は佐野駅の東武佐野線がオーバークロスするあたりではないかと思います。当時は両毛線にも結構な貨物輸送があったようです。

 

 

 気動車の小山行普通列車と思われます。尾端湘南型気動車はキハユニ16ではないでしょうか?

 

 

両毛線にもまだ蒸機牽引の旅客列車があったようです。C58211が8両の客車を牽いて、高崎に向かっていました。両毛線はたったの3コマですが、47年前の姿をご覧願います。

 

 

参考文献

  鉄道ピクトリアル 1961年2月号 通巻115号  特集「東武鉄道」 臼井茂信「ピーコックの園に咲いた花ー東武鉄道の蒸機のすべてー」

      同上                                 吉川文夫「東武の電気機関車」

 

(2012-6-5)
(2016-11-7)タイトル更新


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